トレーダー的思考法を身体に刻み込む方法

書籍「ゾーン」から学ぶトレーダー的思考法 第11話|第11章
Red John 2026.06.09
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1|ここまでの集大成、そして目指すゴール

みんな大好きゾーン第11章と絡めた話をしていく。他の章をぜんぜん読まずにP308の売買演習のところばかり読んでいる人も多いと思う。でも、この売買練習の効果を発揮する人は、11章までの話をしっかりと理解した人だけに限定される。例外はない。

11章にきて、いきなり今までの話が全部繋がってくる。もし、1〜10章までの理解が甘いなと思ったら、書籍と私の解説記事を行ったり来たりしながら理解を深めてほしい。

まず、最終目標。P302にある「私は一貫した勝者である」という信念の確立。この信念を確立することで、一貫した結果が手に入る。1〜10章の話は、これを確立するために必要となる知識。

一貫した結果というのは、

一貫した結果とは「優位性が働かないときの当然の結果であるドローダウンを最小限に抑えた、安定した右肩上がりの損益曲線」と定義している。 P284-3

ここで定義されている通り。

話は少し戻ってP281に。ここでは、トレードが難しい理由として、次を知らない状態で実行しなければならないことが挙げられている。これは今までに語られてきた色々な話と繋がる。例えば、第7章に書かれている「未知の可変要素」なんかがそう。

「知らない状態」の話であれば、もちろん「知っている」とはどういうことかも理解しておかなければならない。そして、P281の終わり。

知らない状態でトレードを実行するために、自分の期待を適切に管理しなければならない。 P281-7

ここで、「期待の管理」の理解が必要だとわかる。そして、さらにこう続く。

そして自分の期待を適切に管理するために、五つの根本的真実を一点の曇りもなく信じるように、心の環境を再構成しなければならない。 P282-1

第7章P207で登場した、以下の「五つの根本的真実」への理解も必須。

①何事も起こり得る。
②利益を出すためには次に何が起こるか知る必要はない。
③優位性を明確にする一定の可変要素には、勝ち負けがランダムに分布する。
④優位性があるとは、あることが起きる可能性がもう一つの可能性よりも比較的高いことを示しているにすぎない。
⑤マーケットのどの瞬間も唯一のものである。

以上の「五つの根本的真実」とトレードのつながりが解説されているのが、第8章だ。

2|トレーダーの3つの発達段階

トレーダーの発達過程には以下の3つがある。

①機械的段階
②主観的段階
③直観的段階

セクション1で触れた「期待の管理」と「五つの根本的真実」への理解を土台として、ダグラス氏はこの章でトレーダーの成長を3段階に整理している。それぞれがどういうものか、順番に見ていく。

3|機械的段階とは何か

最初の段階である、メカニカルステージ(機械的段階)すら、大半の人が突破できずに散っていく。「ルール守って機械的にさえすればいいんでしょ?」って勘違いしている人が多いのも原因の1つかなと思う。

機械的にさえできない人が山ほどいるし、仮に機械的に実行できたとしても、1〜10章の思考が準備できていないことが原因で永久に突破できない人もいる。

第9章に、11章の機械的段階の売買演習についてこう書いてある。

ただし演習を実行する前に本章を読んでもらいたい。記載された演習方法をざっと読んでみると、おそらく非常に簡単そうだと思うであろう。その実践の根底にある意味合いを徹底的に理解する前に、今やってしまおうと思うかもしれない。しかし考え直してほしい。気がつきにくい課題ではあるが、新しい信念を取り入れ、そしてそれらと矛盾する既存の信念を変える方法の習得過程には、重大な力学が潜んでいるのだ。演習方法そのものの理解はやさしい。しかしその前に、その演習をどのように利用して信念を変化させるか理解しなけれはならない。本章と文章で提示された構念を理解せずに実践しても、望ましい結果は得られないであろう。 P234-2

ここまでの長い心理や思考に関する解説を理解していない限り、売買演習をやったところで無駄というもの。心にグサグサとくる人が多発するので大きな声では言えないけど、このような知識を先に知ることなく手探りで検証やデモで練習してるというのは、実はものすごく非効率なこと。

よくそこら中で当たり前のように叫ばれている「ルールを守りましょう」という言葉さえも、「なぜ?」「何を習得するためにやるのか?」という前提がないなら、何の意味もない言葉になる。

「勝つためにルールを守りましょう」なんて言葉が出てくるのは、機械的段階を理解していない証拠。ルールを守るのは勝つためではなく、トレーダー的思考法を獲得のため。

書籍内では以下のように続く。

いかに成功の原理をよく分かっていても、それを完全に受け止めるためには懸命に自分の心を鍛えなければならない。かなりの心の努力を費やす必要がある。しかしそれが当然だと分かっているだろうか。この点も重要だ。投資顧問のボブを思い出してほしい。彼は確率の概念を徹底的に理解していると言じ込んでいた。しかし、確率の観点から行動する能力を持ち合わせていなかったではないか。 P234-2

つまり、成功の原理をよく分かった上で、自分の心を鍛える必要があること。そして、これにはかなりの心の努力が必要だということ。いきなり、何だか自分を勝たせてくれそうな手法に飛びつきたい気持ちもわかる。でも、そのステージからは早く脱出して、自分の心を鍛えるステージに立たなければならない。

引用の中に出てきた「投資顧問のボブ」の話を覚えてない人はP189で復習を。ボブも確率への理解はできてるはずだけど、実践レベルでは思考や行動に反映されるレベルには達していなかった。「知っている」と「できる」の差は大きい。

機械的段階の目的を原著で確認しておこう。

The mechanical stage of trading is specifically designed to build the kind of trading skills (trust, confidence, and thinking in probabilities) that will virtually compel you to create consistent results.
トレーディングの機械的段階は、一貫した結果を生み出すことをほぼ必然的に促すトレーディングスキル(信頼、自信、確率的思考)を構築するために特別に設計されています。

日本語版の「売買技術」という表現とは違って、トレーディングスキル(信頼、自信、確率的思考)となっている。「トレーディングスキルは心理的なもの」だという意味合いが強い。

ダグラス氏はP285-9で、改めて犬を怖がる少年の話を引き合いに出している。犬の話を覚えていない人は、P140-12を復習しよう。

機械的段階でトレーダーがやることはこれと同じ構造。「私は一貫した勝者である」という信念と矛盾する既存の信念が内側にある限り、それを表現することは不可能である。でも、望む信念と一致する経験を意図的に積み重ねることで、少しずつエネルギーが移行していく。

心理的になるのは、すべての土台が信念にあるから当たり前のこと。この、当たり前に気づけるかどうかが鍵。大半の人は、このように徹底解説されないと気づかないほど、日常では信念なんて意識しない。気付けない人の方が圧倒的に多い。多くの人が勝てない理由の1つが、ここの部分への気づきである。

さらに以下。ここも重要。

そしてある信念が(環境の状況に関連して)どれだけ真実かは、どれだけ優れた役割を果たすか、つまりその信念が目標達成にどれだけ貢献するかの度合いにかかっている。 P284-12

ここは、第9章でダグラス氏が「哲学的問題」と言っていた「プラグマティズム」の話と繋がる。「信念が現実に対して役に立つかどうかによって、その信念の有効性が判断される」という考え方。プラグマティズムは、書籍には出てこない話だから、覚えていない人は9章の解説記事を。

さらに以下の箇所。

信念(変化に抵抗し、表現を求める意識的にエネルギー化された概念)を確立すればいい。 P285-1

ここも過去に説明されてきた話。第10章のP256にある「信念の基本的性格」の応用みたいなもの。悪い信念の弱め方の解説が多かったが、ここにきて、必要な信念は「変化に抵抗し、表現を求める意識的にエネルギー化された概念」として確立するればいいってことがサラッと説明されている。サラッとすぎて読み飛ばしそうだけど、この一文が総まとめなぐらい、かなり重要。

4|主観的段階・直観的段階の概要

サブジェクティブ・ステージ(主観的段階)

P282-12あたりから読んでいこう。主観的段階は、機械的段階を乗り越えた後、裁量を活かしはじめてもいい段階。機械的段階で培った信念やスキルをもとに、自分独自の手法や戦略を開発し、トレードに活かすことができる。自分自身のスタイルや戦略を確立し、機械的段階での学びを深化させることができる段階である。

機械的段階で確立した「一貫した勝者である」という信念を持ち、自分の判断に自信を持ってトレードを行うことができる。機械的なルールから一歩進んで、自分の市場理解や洞察をトレードに反映させ、裁量を活用することができる。厳密なルールに縛られず、柔軟に市場状況に対応できる。大半の心理的な問題は克服されており、感情に左右されることが少なく一貫した行動ができる。

ここでは、全ての心理的問題が解決されていることが望ましいけど、自由度が高くなったことにより新たな問題が生じる可能性もある。裁量トレードの自由度が増すことで、「第10章にある自己評価」が未解決のために生じるミスを監視する方法の習得が必要。(P279-13)

主観的段階で勘違いしやすいのが、「機械的段階よりも自由度が上がった」ということを「ルールを無視してもいい」と思ってしまうこと。主観的段階でも、ルールはとても大切なもの。ただ、機械的段階とは少し役割が違う。この段階でも、行動を一貫させるための基盤として機能する。

自由度が高まる一方で、ルールは規律を保つためのガイドラインとして持っておかなければならない。「ルール厳守」は、機械的段階と違って「固定的に同じルールを繰り返すこと」ではなく、基本的な原則やリスク管理のルールを守りながら、必要に応じて戦略を調整するという意味へと変わる。

インティユティブ・ステージ(直観的段階)

P283-2から。トレードが自然な行為となり、意識的な努力をせずとも最適な判断と行動ができる段階。自分自身と市場に対する完全な信頼がある状態。私がよく言っている、トレーダー的思考法を習得すれば怒りや不安といった感情がそもそも湧かなくなるのがこの段階である。

市場の動きを直感的に理解し、無意識のうちに最適なトレードを行う。これが「ゾーン」に入った状態であり、スポーツ選手が最高のパフォーマンスを発揮するときのようなもの。トレードが自分の一部となり、最高のパフォーマンスを自然に発揮できる状態を維持することができる。

直観を「自然発生的なもの」だと書いているけど、ここが最近の科学の見解とは異なるところ。その瞬間だけ見れば自然発生的だが、私がいつも言っている通り、直感とは「膨大な経験を元に脳が爆速で導き出すもの」である。

膨大な経験を積み、直感を生み出しやすくすることは可能。今まで散々、「ルール厳守」と言ってきたけど、ルール厳守によって培われた経験を元に生み出された直感力は、ルールより優位になる。

優れたトレーダーの「今日はなんとなく嫌な予感がするから、ノーポジで様子を見よう。」なんてのもこれだ。

主観的段階から直感的段階に移るには、ルールよりも直感のほうが上だという認識に変化させなければならない。機械的段階を突破していない段階での単なる山勘には従ってはいけないけど、直感的段階では直感に従わなければならない。

主観的段階と直観的段階の違い

2つの違いが書籍ではわかりにくいので解説。

意識的な努力の有無
主観的段階:意識的な判断や分析を行い、自分の裁量で行動
直観的段階:意識的な努力をせず、無意識のうちに最適な判断と行動

市場との関係性
主観的段階:市場を理解し、自分の分析や洞察を基にトレードを行う
直観的段階:市場と一体化しており、分析を超えて直感的に市場の動きを感じ取る

トレードの自然さ
主観的段階:トレードはまだ意識的な行為であり、思考や分析が必要
直観的段階:トレードが自然な行為となり、特別な努力を感じない

心の状態
主観的段階:心理的な問題は克服されているが、まだ意識的な注意が必要
直観的段階:心の中に葛藤や迷いがなく、完全な平静と集中を保つ

たとえば、主観的段階だと、ピアニストが楽譜を見ずに演奏できるが、まだ意識的に指の動きや音を確認しながら弾いている状態。直観的段階では、音楽と一体化し、指が勝手に動いて美しい音楽を奏でる状態。

車の運転でも、意識的な操作から離れ、無意識に体と一体化しているような運転が直感的段階。

これで目指すべき方向のイメージができたはず。

次のセクションからは、機械的段階を乗り越えていくために必要な具体的な方法について話していく。

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