あなたのトレードをずっと壊し続けてきたのは実はあなた自身の信念だった

書籍「ゾーン」から学ぶトレーダー的思考法 第10話|第10章
Red John 2026.05.26
サポートメンバー限定

1|信念がトレードに与える影響

世界は無限の方法で自己表現ができて、学ぶべきこともたくさんある。これは、前に話した「トレードでは無限の組み合わせがある」という話と同じようなもの。世界には、すべてを知ることはできないほど多くのことが存在している。でも、実際には私たちはその無限の選択肢を自由に使って生きているわけじゃなく、信じていることに基づいて行動している。つまり、自分の信念によって自分に制限をかけている状態。信念が枠を作って、その中で生活している感じ。

ここまでが大前提。では、信念が私たちの行動や判断にどう影響するか、そしてその結果としてトレードにどんな影響が出るのかを探っていこう。

信念のぶつかり合いと争い

違う信念を持っている人同士がぶつかると、争いや対立が生まれることがある。これって、個人同士のケンカから、国同士の戦争まで、いろいろな形で現れる。これは普段の生活でもよく見ることだと思うけど、どうして私たちは自分の信念を守ろうとして、他人の信念を否定しがちなんだろう?

心理学的には、この現象は2つの概念で説明できる。

一つ目は「防衛機制」。これはフロイトが提唱した概念で、自分の心が脅威にさらされたときに、無意識に自分を守ろうとするメカニズムのこと。信念を否定されると、まるで自分自身が攻撃されたように感じる。だから反論したり、相手を攻撃し返したりして、自分の信念=自分自身を守ろうとする。ダグラス氏が「信念への挑戦は攻撃のように感じられる」と言っているのは、まさにこの防衛機制が働いているということ。

二つ目は「認知的不協和」。アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した概念で、自分が信じていることと矛盾する情報に出会ったときに生じる、不快な緊張状態のこと。たとえば「自分は健康に気をつけている」と思っている人がジャンクフードを食べてしまったとする。この瞬間、矛盾が生まれて心がザワつく。この不快感を解消するために「今日だけは特別」と理由をつけて正当化しようとする。信念のぶつかり合いでも同じことが起きていて、相手の信念を攻撃することで「自分が正しい」という一貫性を保とうとする。

この2つが重なって、人は自分の信念を守るために戦う。個人のケンカから国同士の戦争まで、根っこにあるのはこのメカニズムだったりする。

信念の意識と表現

ダグラス氏はここで興味深い持論を展開している。本人の言葉を借りると「信念は構造的なエネルギーであるだけでなく、意識できる、少なくともある程度は認知できるエネルギーであると思う」(P254-6)というのが彼の見解。つまり信念は、まるで生き物のように自分の存在を認識して守ろうとする性質があるように見える、という考え方。私自身はこれを「信念が文字通り意識を持つ」とは解釈していなくて、「人が自分の信念を守ろうとする行動がそう見えるだけ」だと思っている。

ただ、ダグラス氏がこういう世界観でこの章を書いているということは知っておくと、この後の3つの特徴がより腑に落ちやすくなる。

また、私たちは自分と似た信念を持っている人たちと一緒にいると安心感を感じることが多い。これは、社会的な同調や、進化的にみても生き残るための戦略に基づいている。同じ信念を持つグループと一緒にいると、安全で守られていると感じやすい。これは、普通の感覚だから理解しやすいと思う。

信念とエネルギーの関係

『ゾーン』では信念を「エネルギー」として説明しているけど、これは信念が持つ力や影響力を表現した言い方だと思ってもらえればいい。科学的に言えば、信念は脳内の神経回路の活動として捉えられていて、強い信念ほどその回路が繰り返し強化された結果。つまり「エネルギーが強い信念」=「強化された神経回路を持つ信念」ということ。そして、一度できた信念のエネルギーを別の形に変えることで影響力を弱めることができる。これが「非活性化」というアプローチ。

信念がトレードに与える影響

信念が行動や判断に強く影響することが理解できたなら、トレードにおいても信念がトレーダーの行動や判断に大きく関わることがわかると思う。もしこれまでのトレードがうまくいかなかったなら、それはトレードに適した信念を持っていなかったということ。その信念を新しい信念に置き換えない限り、これからも同じ結果が続くことになる。だから、勝てるようになりたいなら、信念を変える必要があるってこと。

そして、信念を変えるためには、信念とは何かってことを理解して、そのエネルギーを「非活性化」すること。これによって、新しい情報や考え方を受け入れやすくなり、トレードにおいても柔軟に判断できるようになる。自分の信念をうまく扱うことで、トレードが改善し、より良い判断ができるようになるはず。

2|信念の3つの特徴

信念がどのように作られて、維持され、変わるかを理解することは、トレードだけでなく日常生活においても重要。でも、ゾーンを読んでみると、比喩的な表現が多くて、実際のところどう理解すればいいのか迷うことがあるかもしれない。そこで、ここでは私自身の解釈や科学的な視点も交えながら、信念がどのように働くかを詳しく解説していく。

まず、信念には3つの基本的な特徴がある。この3つの特徴を理解することで、トレードや日常生活において、より良い判断を下せるようになるはず。

①信念はまるで独立しているかのような性格を持つ。そして現在の形を変えようとするいかなるフォースにも抵抗する。
②すべての活動的信念が表現を求める。
③心の環境に存在することを意識的に認知するか否かにかかわらず、信念は機能し続ける。

P256-6

この3つの特徴を本当に理解できると、なぜ自分が同じ失敗を繰り返すのか、なぜわかっていても変われないのかが、構造として見えてくる。そしてその構造が見えた瞬間に、何をすべきかも見えてくる。

それでは1つ1つ丁寧にメンバーシップ限定で解説していく。

この記事はサポートメンバー限定です

続きは、5841文字あります。

下記からメールアドレスを入力し、サポートメンバー登録することで読むことができます

登録する

すでに登録された方はこちら

サポートメンバー限定
「自分は正しい」と思っている時点で、すでに間違っている
サポートメンバー限定
恐怖を我慢するな。そもそも感じない頭の使い方がある。
サポートメンバー限定
『次こそ勝つぞ』と思っている時点で、すでに負けている。
サポートメンバー限定
最高のトレードと最悪のトレードを分けていたのは、手法じゃなかった。
サポートメンバー限定
認識が変われば、相場が変わる。
サポートメンバー限定
「一貫性」の本当の意味を、あなたはまだ誤解している。
サポートメンバー限定
責任・怒りの矛先
誰でも
自由になりたくて、始めた。なのに、なぜルールが必要なのか。