認識が変われば、相場が変わる。

書籍「ゾーン」から学ぶトレーダー的思考法 第5話|第5章
Red John 2026.04.21
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1|チャートは中立だ

今回から、第5章に入っていく。この章には、「マーケット情報からの苦痛の脅威をいかに取り除くか?」という書籍「ゾーン」の目的の1つを達成するために、マーケットの情報と自分の関係を再定義する方法が書いてある。やっぱり初見には難解だ。何度も言うけど、深く考え続けないと理解できないんじゃないかと思う。

まずはじめに、マーケットってどんなもの?ということが解説されている。簡単に言うと、マーケットは善悪なく、楽しい、つらいなんて感情を投げかけてくるものでもなく、「単なる情報」ってこと。これは私が何度も言い続けてきたことだから、もうわかっている人がほとんどだと思う。一応言っておくと、「チャートは変化する連続した価格を表示しただけのもの」だ。異論は認めない。そして、その表示方法に、ローソク足が使われることが一般的。これにいろんな計算式をこねくり回して複雑にしているのがインジケーターというわけだ。

たとえば、年間の気温グラフを見て、夏は暑そうだな、冬は寒そうだなと思うことはあっても、その感覚は人それぞれ。大阪の気温グラフを見て冬寒そうと思う沖縄県民だっているし、冬暖かそうでいいなと思う北海道民だっている。単なる情報に感情を乗っけるのは、いつだって人間側だ。

マーケット情報だって同じことだ。単なる価格変動でしかないものに、上がれ、下がれ、楽しい、つらいというのは、トレーダー自身の頭の中で起こっていることだ。そして、この頭の中で起こっていることに、勝ち組と負け組に大きな差がある。差というか、全く違うもの。大半のトレーダーが、単なる情報を見て苦痛を感じるけど、プロは苦痛として認識しない。単なる情報は単なる情報だと考える。

じゃあ、一般的なトレーダーに属する人たちはどうすればいいのか。それを解決するためにはまず、「認識プロセスの分析」をしなければならないということを言っているのが、この先の話だ。

P131「心のソフトを修正する」というところでは、今度はマーケット側じゃなくて、自分の心側がどうなっているかというところにいきなり視点が変わっているから、頭の中でごちゃ混ぜにならないように注意してほしい。

トレードはエントリーした瞬間から始まると思っている人がものすごく多いけど、「トレードは認識から始まる」ものだ。この認識の部分は、非常にブレやすいから注意が必要で、特に初心者のうちは、誰か有名な凄腕(?)トレーダーの「上がりそう!」「下がりそう!」というポストを見るだけでブレる。ゾーンには「トレードは認識から始まる」と書いているけど、その認識を左右する事前情報(先行刺激)にも気を配らないと、かなりまずいことになる。

***

2|フォースとエネルギー

ここでは「心のエネルギーの性質を理解し、エネルギーの利用法を習得」というのが課題となっている。

そのためには、「認識プロセスの分析」が重要な鍵となる。

・認識がそのときの経験をどのように関連づけるのか。
・認識の根底にある力学とは何か。
・どの要素がどのように情報を認識し、どのような可能性を認識するのか。

この疑問を解決するには、地球に存在する全てをフォースの集合体ととらえる必要がある。「はい、ダグラスさん。また訳のわからんこと言ってきた」と思ったそこのあなた。気持ちはわかる。私も思ったから。

まずは、情報がどのように知覚され、解釈されるかを「石」の話を例に出して解説している。これが「フォースの仕組み」ということだ。「フォースってなんだ」と思ったら、「身の回りのあらゆるものがフォース」と思っておけばいいんだけど、それでも「フォースってなんだ」という気持ちが消えないと思うから、もう少し詳しく説明する。

ややこしいことに、日本語で「力」を表す「フォース」と「エネルギー」という2つの言葉が出てくる。ここ100人いたら、サラッと雰囲気で読み飛ばしている人が99人はいるんじゃないかというくらいだけど、ここはなんとなくでもいいから、違いを理解しておいたほうがいい。フォースの説明だけだと「は?」となると思うけど、エネルギーとの比較を加えると、完全理解とまではいかなくても、「よくわからんけど、なんとなくわかった」というレベルまではいけるはずだ。

期待を裏切らないように言っておくと、「フォース」とは、ジェダイの騎士のアレだ。(違う)

わかりやすいように少し物理の話を混ぜていく。物理と言っても、わかりやすいようにザックリとしか書かないから安心してほしい。

フォースとは「物質が持つ力そのもの」で、その力の大きさを表す単位がニュートン(聞いたことない人はスルーでOK)。フォースの大きさを具体的に表現するためにニュートン(N)という単位を使う。フワッと雰囲気だけで大丈夫だ。

エネルギーとは、位置エネルギーや運動エネルギーとかあるけど、とりあえず「物体が持つ仕事をする能力」と思っておけば大丈夫。単位はジュール(J)だ。

フォース:物質が持つ力そのもの
エネルギー:物体が持つ仕事をする能力

たとえば、筋肉ムキムキの人がいたとして、

フォース(力):筋肉が発揮する力そのもの。ダンベルを持ち上げようとする瞬間に筋肉が生み出す力のこと。トレーニングコーチ等に励まされる(外部の影響)ことで、より多くの力を発揮できる。この力の大きさはニュートン(N)で表される。

エネルギー:ダンベルを実際に持ち上げるときに消費されるもの。フォース(力)を使って物体を動かしたとき、初めてエネルギーが使われる。トレーニング中のやる気、集中力もエネルギーの一種だ(精神エネルギー)。この仕事量はジュール(J)で表される。

フォースは力そのものを指し、エネルギーはその力を使って仕事をする能力を指す。似たような感じがするけど、それぞれ異なるものだ。

トレードにおけるフォースとエネルギー

フォース (Force) 定義:トレーダーの行動や意思決定を引き起こす外部または内部の影響力。具体的には、マーケットの動きや心理的プレッシャーがトレーダーの決断に影響を与える力。 例:市場の急激な変動がトレーダーに売買を促す力。

エネルギー (Energy) 定義:トレーダーの心や精神の中にある内面的な力。トレーダーが市場での機会を認識し、それに基づいて行動するための精神的な活力やモチベーションを指す。 例:自信や恐怖、欲望などの感情がトレードに影響を与える精神的エネルギー。

物理との関連

物理におけるエネルギー:仕事をする能力で、ジュール (J) で表される。トレーダーの精神的エネルギーも、内面的な仕事をする能力として捉えられる。
物理学におけるフォース:物体に作用する力で、ニュートン(N)で表される。トレードでは、外部の市場動向やニュースがトレーダーの行動を変える力として機能する。

結論

エネルギー:トレーダーの内面的な力や精神的活力。例:自信、恐怖、欲望。
フォース:トレーダーの行動や意思決定を引き起こす外部または内部の影響力。例:市場の動向、ニュース。

エネルギーとフォースはトレーダーにとっても重要な概念で、物理と同様にそれぞれ異なる役割を持っている。

著者のマーク・ダグラス氏がここまで意識して書いたかどうかは不明だけど、このような違いがあると思ってゾーンを読むと、より理解が深まる。「フォースってなんやねん」と思いながら読んでいた人は、ちょっと意識してみてほしい。

***

3|心の中にできる「エネルギー構造体」

フォースとエネルギーの違いをふわっとでも理解した上で読み進めてほしい。この違いがわかっていないと頭が絡まる。

5章の前半では、フォースやエネルギーとはこういうものだという解説が延々と続いているんだけど、フォースとエネルギーの違いがわかればOKだ。

P136の「認識と習得」では、エネルギーがフォースになるパターンもあるということを言っている。エネルギーとフォースの違いがわかっていないと、ここで完全に迷子になる。

どのようなエネルギーも、その形を表現するフォースとして機能する可能性がある。(P137-5)

心のなかにある構造的エネルギー(蓄えた知識)が、自分の目でフォースとして作用し、自分が学んだ幾つかの区別を認識させたのである。(P139-7)

ここで出てくる「構造的エネルギー」というワードの意味が少々分かりにくい。カッコ内にもあるように、「蓄えた知識」のこと。エネルギーというのは、心のエネルギーや環境エネルギー、情報エネルギーなんかがある。ここで言う構造的エネルギーとは、情報エネルギーの一部。過去に学んだ知識、データや経験が、理解・利用されることに関連する。

「なるほどわからん」という人は、過去に学んだ知識はエネルギーに分類されるとだけ覚えておけば今は大丈夫だ。そして、この過去の知識というのは、フォースとして作用することが多々あるということだ。

この5章の前半の話が少々難解で、今まで読み飛ばしていた人が大半だと思うけど、実はこの後に続く、犬と少年の話を理解するために必要だから、この前半部分は何度も読んで理解しておいたほうがいい。

***

4|認識の閉じたループ

P140辺りは、バイアスやスキーマ(書籍内にはない言葉)についての話だ。スキーマとは、過去の経験や学習を通じて心の中に形成された「認識の枠組み」のこと。人間は新しい情報に接したとき、ゼロから理解しようとするのではなく、すでに持っているこの枠組みに当てはめて理解しようとする。医者は白衣を着ているというスキーマがあると、白衣を着ている人を見た瞬間に「医者だ」と認識できるみたいな感じだ。これがまさに、過去の知識(構造的エネルギー)が認識をトップダウンで制御している状態だ。

この2つは似ているようで違う。スキーマが「枠組みそのもの」で、バイアスが「その枠組みによって生じる認識の偏り」だ。「医者は白衣を着ている」というスキーマがあると、白衣を着た詐欺師を医者だと信じてしまう。これがバイアスだ。スキーマが原因で、バイアスはその結果として起きる。

「人は自分が知りたいことを知る」という文句を聞いたことがあるだろう。私はちょっとその表現を変えてみたい。「人は自分が知る方法を学んでいるものしか知ることはできない。そしてその他のことは、まだ学んでおらず発見されるのを待っているものが何であれ、その認知を阻止するエネルギーの解消法を知るまで、見えないままである」(P140-6)

これ、自分のことを思い返してみてほしい。P138-11にもある通り、生まれて初めてチャートを見たとき、ほとんど意味のわからない線だったはず。ところが今は、トレンド、サポート、レジスタンス、様々なパターンが見える。チャート自体は何も変わっていないが、変わったのは自分の内側。過去に学んだ知識(構造的エネルギー)が認識をトップダウンで制御して、以前は見えなかったものを見えるようにしている。

裏を返せば、まだ学んでいないことは今も見えていない。チャートの中にある無数のチャンスのうち、認識できるのは自分が学んだ範囲のものだけだ。チャートを見る時間をどれだけ増やしても、学んでいないパターンは永遠に見えないままである。上級者の真似をして同じインジを入れて色まで合わせたって、同じ結果にならない理由はこういうことだ。

***

ここまでで「なぜ認識が歪むのか」という仕組みの土台が見えてきたはずだ。でも、この先が本当に重要だ。人間の脳がどのように「連想」と「投影」を使って、同じシグナルを全く別物に見せてしまうのか。そして、なぜほとんどのトレーダーがこの罠から抜け出せないのか。

その答えが、この先にある。続きはサポートメンバー限定で。

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