「今回は違う」が出た瞬間、トレードは壊れ始める
期待値がプラスのはずなのに負けが止まらない。この矛盾を抱えたまま勝率を追いかけ続ける人が多い。でも原因はだいたい勝率じゃない。統計が成立してない。もっと正確に言うと「同じ状況で同じ行動が出ない」せいで、期待値が現実の損益に変換されてない。
ここで扱うテーマはメンタル論じゃない。実行率。いわゆる、決めた行動が本番の特定状況で再現される確率。これが低い限りどれだけ理屈が正しくても、損益は「気分のブレ」に支配される。そして実行率が崩れる瞬間には、ほぼ共通のサインがある。
「今回は違う」
この一言が出たら、もう相場の話じゃない。自分の中の話だ。
ルールが守れないのは、意思が弱いからじゃない
「守れない」という言い方がズレてる。守れないんじゃない。その状況で実行できる構造が存在してない。平常時の自分と、ポジション保有中の自分は別人格になる。負けが膨らむ。急変が来る。見送りが続く。連敗する。こういう局面で脳は「危機モード」に切り替わる。危機モードに入った瞬間、判断軸は「正しさ」から「痛み回避」「危機解除」にスライドする。
ここで起きるのが例外化。ルールを破るんじゃない。ルールを「使い分ける道具」に降格させる。そして例外化の入口に立った時、頭の中に浮かぶのがあれ。「今回は違う」と。
これ、相場が特別だって洞察じゃない。自分が非常運転に入った宣言だ。非常運転に入ったルールは、もうルールじゃない。守りようがない。
実行率を壊す最大要因は「評価関数の破綻」
実行率が落ちる人は、脳内の「正解」がズレてる。勝ち=正しい、負け=間違い。これで自分を裁くと、ルールは必ず揺れる。勝敗は分布の一部にすぎないのに、毎回それを最終判定にしてしまうからだ。勝った日は「このやり方でいい」と感じ、負けた日は「このやり方はダメ」と感じる。同じルールでも勝敗で「正しさの印象」が上下する。印象が上下すると次の一手が変わる。次の一手が変わると統計が壊れる。統計が壊れると、ますます勝敗で裁きたくなる。
断ち切る方法は一つ。