「不確実性」とどう向き合うか?統計学から学ぶトレーダー的思考法
「勝率70%!」「月利10%達成!」こんな言葉を聞くと、思わず飛びつきたくなる人も多い。だけど、少し立ち止まって考えてみてほしい。その数字、本当に信用できるだろうか?トレードの世界は、「不確実性」で満ちている。未来は誰にも予測できないし、過去のデータもそのまま鵜呑みにすることはできない。
この記事では、トレーダーが陥りがちな「数字の罠」を避け、不確実な世界で、どのように思考していったらいいかを、統計学の視点からわかりやすく解説する。統計学という学問は、そもそも「ハッキリしない世界で、何が“確からしい”と言えるのか?」という疑問を探るものだ。
つまり、これから取り上げる6つのポイントは、すべて「不確実な世界で、どうやって正しい認識を持ち、どう判断するか?」という問いにつながっている。
1. アンケート調査の落とし穴
アンケートに答えるとき、いつも正直に、同じように答えられているだろうか。実は、同じ質問でも、「誰が聞くか」「いつ聞くか」「質問の順番」で答えが変わることがある。人は無意識に「自分をよく見せたい」「思い出せない」といった理由で、正直に答えられないこともある。
たとえば、「あなたは孤独を感じていますか?」という質問が、「寂しさの調査の1問目」か「たくさんの質問に答えた後の最後の質問」かによって、回答が変わることもあるだろう。
これはトレードにもそのまま当てはまる。たとえば、バックテスト(過去のデータを使って手法の有効性を検証すること)で出る勝率やプロフィットファクター(PF)も、「どういう条件でテストしたか」で大きく変わる。
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テスト期間はどのくらいか?
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どんなロジックを使ったのか?
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資金管理のルールは?
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トレンド相場での結果か?それともレンジ相場か?
これらの条件を考えずに「勝率90%!」と聞いても、それはまるで「相手によって答えが変わるアンケート」に基づいてトレード方針を決めるようなもの。トレードで重要なのは、「この勝率は、どんな状況で、どんなテスト方法で得られたものなのか?」と常に問いかける姿勢である。
2. 質問の「言い回し」で結果は大きく変わる
同じ内容でも、言い方を変えるだけで相手の受け取り方はガラッと変わる。たとえば、「16歳~17歳にも選挙権を与えるべきか?」と聞いた場合と、「18歳から16歳に引き下げるべきか?」と聞いた場合で、賛成・反対の割合が逆転したという話がある。言葉のニュアンスが「リスク」や「保守的」な印象を与えるだけで、回答が変わってしまう。これはトレードにおいても同様だ。